金色のアマガエル

 いま、作品のことを書こうとして、金色のアマガエルを見つけた日のことを思い出しました。夏休みのある日、うちのそばにあった田んぼで遊んでいると、数歩先にアマガエルがぴょんと現れました。はじめは目を疑いましたが、たしかにそのカエルはいつもの緑色ではなくて、はっきりとした金色だったのです。それで絶対逃がすまいと、慎重に慎重に近寄ったところ、そのカエルは微動だにしないでいてくれて、あっさりと捕まえることができました。ところが、虫かごに入れてよく見ると、カエルはいつもの緑色をしていたのです。どうしたわけかと不用意に籠をあけてそのカエルをいじくっていたら、跳びはねて逃げてしまったのですが、不思議なことにそうするとまた金色に戻っていました。帰って母親には光の当たり方でそう見えたのだと言われましたが、「そんなことでは収まりがつかない」と思ったあのときの気持ちをよく覚えています。

 この世界には、捕まえるということが適切な関係の仕方ではないような相手がいるのだと思います。歯がゆさや寂しさはそこから生まれるのかもしれませんが、私はあの日、不思議と開放感のようなものを感じていました。私はこの制作のあいだ、そういう開放感のことをずっと考えていたような気がします。

演出 中尾幸志郎